清原絵画教室 主宰の理念

                                                                平成29年3月31日作成
                                                                清原絵画教室主宰 清原健彦
1.目的


清原絵画教室の目的を、すぐれた美術家の育成とします。

 

(1)私は、すぐれた美術家を以下のように考えます。

 

 ① 視覚表現で人びとに良い精神的作用をもたらす人
 ② 「純粋美術」に携わる作り手
 ③ 美術が生業(なりわい)でなくとも、制作・表現活動を持続的に行う意志のある人

 

(2)以下、具体的に説明します。

 

① 「純粋美術」と「応用美術」と「娯楽」、そして「美術」

■ まず美術を「純粋美術」と「応用美術」に、概念として区別します。「純粋美術」は芸術の一分野であり、おもに視覚表現で精神的作用をもたらす行為です。精神的作用をもたらすことを目的・機能とした「純粋美術」は、他の目的・機能を持ちません。また、すぐれた美術表現は、必ずしも美しくある必要はありません。


■ 「応用美術」には工芸(クラフト)と意匠(デザイン)が含まれます。工芸は生活上機能する物品を作ることを目的としており、それがたとえ美しさや洗練を追求したとしても純粋美術とは区別されます。また、物品の外観を美しくするため形・色・模様・配置などを考案することは意匠(デザイン)と呼ばれますが、これもまた「純粋美術」とは区別されます。

 ただ「純粋美術」と「応用美術」とは種々に組み合わさった形で存在し、服飾、広告、出版、建築設計、陶芸、家具、工業製品などに多く見られます。


■ 次に「純粋美術(ファインアート)」と「娯楽(エンターテイメント)」を、概念として区別します。
「純粋美術」は芸術として人の意識に変容をもたらし、長期間その力が持続し、人格や態度や世界観をも大きく変えることがあります。一方「娯楽」も精神的作用をもたらしますが、一時的なもので影響も限定的です。しかし表現されたものがどう受け止められるかは多様であり、明確に区別できないことが多く、「純粋美術」と「娯楽」の混在したものが存在し、漫画、イラストレーション、アニメーション動画などにその例を見ることができます。


これら「純粋美術」と「応用美術」、そして「娯楽」が混在したものを総称して「美術」と呼びます。

 

② 美術家

  「純粋美術」に携わる作り手(表現者)を美術家(アーティスト)とし、工芸に携わる作り手を工芸家(クラフトマン)、意匠に携わる作り手を意匠家(デザイナー)とし、イラストレーター、アニメーター、漫画家など、娯楽に携わる作り手も、ここでは美術家と区別します。ただし実際にはこれらを明確に区分することは難しく、これらを美術家と呼ぶことがあり得ると考えます。

 

③ すぐれた美術家であるために必ずしも生業(なりわい)として成功している必要はありませんが、制作・表現活動の持続は重要であり、そのために情報、資金、道具、設備、発表の機会、客、支援者、協力関係者などを獲得・維持するのは必要不可欠です。そのための指導と情報提供も当教室の務めの一つであると考えます。

 

 

 

 

2.指導方針


主宰と講師は上記の目的を達成するため、以下の方針で生徒の指導に臨みます。


① 美術家として遇します
美術家でいるために経験や技術を有している必要はありません。それを目指す意志が少しでもあれば誰でも美術家となり得ます。その意志と自覚を重視するがゆえに当教室は生徒をそのように遇します。それが「すぐれた」美術家に導く有効な姿勢だとも考えます。


② 実践を重視します
展示発表、販売、美術鑑賞などを実践経験の場とし、その獲得と提供に努めます。


③ 対話による意思疎通を尊重します
美術における考え方や価値観は非常に多様であり、一律で均質な導きは機能しません。当教室は、生徒を独立した価値観を持つ主体者とし、丁寧で粘り強い対話に重きを置き、「ナビ」と呼ばれる助言・提案で対応します。

 

④ 意識(考え方)、感性(感じ方)、技術(やり方)の向上を目指します
表現においては、技術だけでなく意識と感性がその質や量に影響を与えます。美術大学ではそれらを高めるためのさまざまな主題の情報と知恵(評論、文化、背景、鑑賞、社会、動向などを含む諸学問)が講義形式で伝達されますが、当教室ではもっぱら授業の中で実技と織り交ぜる形で、講師・生徒間の対話を通してそれを行います。また、当教室には確実な技術向上をもたらす独自の実技プログラムがあり、指導の主軸としてその提供に努めます。

 

⑤ 純粋美術に重きを置き、応用美術と娯楽は二義的と考えます

 

⑥ 絵画を主たるメディア(表現媒体)とします
教室の目的を、すぐれた「美術家」の育成とし、すぐれた「画家」と表現しないのは、以下の理由からです。
1.「美術家」という言葉が内包する純粋芸術的要素を尊重し、「画家」という言葉に含まれる職能的要素を避けました。
2.採用するメディアを限定すると、表現の豊かさを制限することがあります。今日では立体物や映像などの複数メディアを使用する美術家や、一作品に複数メディアを併せて使用する例が多く存在します。これらの動向に対応するため「画家」を用いず「美術家」を採択しました。
その上で、絵画を主たるメディアとしました。原則、絵画以外には注力しません。
※美術における絵画以外のメディアとは、彫刻、版画、陶芸、写真、映像、身体表現、設置(インスタレーション)、建築、音声、コンピューター、概念芸術などを指します。メディアには、材料と伝達方法の二つの意味があります。

 

⑦ 相互扶助の精神と仲間意識を大切にします
主宰、講師、生徒が適度に整った秩序と仲間意識で結ばれた集団の形成・維持に努めます。そのために、主宰の理念への共鳴と賛同が重要と考えます。
                                                                                以上